『モチモチの木』という童話の絵本があります。 たまに本屋さんで見かけると、私は苦い思いがこみ上げ、目をそらしてしまいます。 本当は、きっと好きな物語と絵になるはずだったのですが... 小4の時、先生が授業で『モチモチの木』という童話を読み聴かせました。 そして、月夜の晩、ある一夜だけ樹が輝き燃え上がる場面を想像して描けという課題が与えられました。 先生は、とよなが某という、当時23才の女性教員でした。 公の場で彼女が確信を持ってとった行動なので、伏せるまでもない事なのでしょうか。 もう数十年も前の事... ・ ・ ・ ・ ・ 月夜に燃えるモチモチの木... モチモチの木の枝は、きっと梅の枝のように表皮が割れていてツルツルと光り、そして折れ曲がった無数の枝が複雑に絡み合っているのだろう。 それが背後の月の光を受けたある瞬間に、枝々が光を乱反射させ樹全体が淡くぼうっと輝き、夜の闇の中に浮かび上がるのだろうと思いました。 乱反射する光は分解され、青、黄、ピンク、緑...さまざまな色の光球が浮かび全体の輝きとなる... そんなことを想いめぐらしながら描きました。 周りを見たら、クラスのみんなは判で押したように、木がオレンジ色の炎で燃え上がっている絵を描いていました。 月夜の晩の度に物理的に燃えたりしたら木はどうなるんだい?... そういうことを考えながら描かないのかな…と、意外に思いました。 描き上がったところで、先生が皆に絵本のそのシーンを見せました。 私の想像にとても近い絵でした。 ↓こんな感じの絵を想像して描きました
先生が採点し、絵が戻ってきました。 皆は全員5丸の花丸。私だけ3丸。 絵を描くのだけが取り柄の子供だった私の絵は達者でしたし、想像はとても良く合っていましたので、皆の絵より下のはずがないと、納得出来ませんでした。 先生に不満を訴えると、 「あなたは、この絵本を読んだことがあります。そうでなかったら、こんなにソックリに描けるはずがありません」 私は読んだことがなかったので否定しました。 すると先生は「いいえ読みました。みなさん、彼はこの絵本を読みました!多数決で決めましょう」 最初は数人がおずおずと手を挙げましたが、先生がさらに「彼は読みました!みんな、そうですね。手を上げなさい」と強い口調で言い、全員が手を挙げました。 ひとりひとりが個人的に私と向き合い、意見を問われれば違う結果にもなるでしょう。 集団心理ということもあるし、だいたい、多数決で決めるような事ではありません。 これはヒドイと思いました。 しかし、舌っ足らずな子供だった私は、ただただ「読んでいません」と言うしかありませんでした。 ・ ・ ・ ・ ・ 小中高と、その教師と同じ団塊の世代の先生が多かったのですが、単細胞というか、教条主義的というか、自分の感性で物を考えないような人が多くて閉口しました。 二言目には「多数決。クラスの和。民主主義。平等。みんなで...」 育った時代が影響しているのでしょうか。 より年配の戦前戦中派の先生達は、いつも怒っていたり、体罰が厳しかったりしましたが、人格的に信頼出来る人が多かったです。 とは言え、小学校の最初に担任になって頂いた先生は、モチモチの木の教師(昭和23年生まれ)とほぼ同じ世代(昭和20年生まれ)の女の先生でしたが、今も尊敬の念が薄れない、素晴らしい人物でした。 最初の先生が良かったのは、その後の希望の糧となりました。幸いでした。
2008.8.21作成 |