鵺 (ぬえ)


鵺(ぬえ)
鵺は深山に住む化鳥である。
源三位頼政が、頭は猿、足手は虎、尾はくちなわ(蛇)のごとき異物を射落とすと、啼く声が鵺に似ているので、鵺と名付けたのである。
「今昔画図続百鬼」(鳥山石燕)より

トラツグミのような「ヒィィ、ヒョォォォー」という無気味な鳴き声が、夜の闇に響き渡る。
平安の世、京の都に起こった怪異。

古代より、我が国では不吉な鳴き声の鵺鳥の出現が、繰り返し語られている。
キメラ的妖獣の姿が当てはめられたのは、後の源頼政の退治した怪物が「おそらく、これぞ鵺であろう」とされてからである。

近衛院の御代、夜毎丑の刻に、東三条の森の方から黒雲が湧き出て、帝の住まう御所南殿を覆い、帝をおびえさせ苦しめた。
公家達は、この難事に対して対策を練った。
寛治の頃、堀川天皇の御代、怪異が帝を苦しめたが、源義家(1042-1106)が鳴弦をして退けた故事から、源氏の武士源兵庫頭頼政(1104〜1180)を召し、これに当たらせることにした。
豪傑源頼政は家臣猪の早太ただ一人を従えて参内した。袷(あわせ)の狩衣姿に滋藤(しげどう)の弓、山鳥の尾羽をはいだ弓矢2本を持ち、鵺の現れるのを待った。
丑の刻になると、東三条の森から黒雲が湧き出て来た。南殿の屋根を見れば、雲の中に怪し気な物影が見え隠れするようである。
これを豪傑源頼政が「南無八幡大菩薩」と祈り唱えつつ矢を放つと、手応えあって、凄まじい音とともに怪物が屋根から庭へと転げ落ちてきた。 猪の早太が、得たりや応と走り寄り、馬乗りとなって組み伏せ斬り殺した。
その化け物は、頭は猿、四肢は虎、体は狸、尾は蛇のようであった。
啼く声が鵺鳥(トラツグミ)に似ていたことから、後の世に語られるうちに、この怪物の事を鵺と呼ぶようになった。
屍体はうつぼ舟(うつお舟・・・丸木舟)に乗せられ川に流されたが、摂津の国芦屋の里に、寂しげな男の霊の姿となって舟とともに現れ、鵺の怪であった己の過去を旅の僧に語ったという後日譚もある。→『鵺の霊』


↑2003年頃に描いた旧作デス°°。


出典:「平家物語」「源平盛衰記」他


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