鳥山石燕の「画図百鬼夜行」では、鐘の前に立つ、ぼろぼろの袈裟姿の恨めし気な妖怪として描かれているが、石燕の初期妖怪画連作集である「画図百鬼夜行」の例に漏れず、絵のみで説明文は無い。
石燕の絵に従えば、野寺坊は手足とも3本指である。 中国の皇帝のシンボルとしての龍は5本指であるのに対して、ランクの低い龍や魔物は指の数が減る。 魔物の3本指は、怒り、貪欲、愚痴を示し、これに、知恵と愛情の2本の指が加わることによって、悪に陥らずにいられる存在となれる。 野寺坊は、身なりこそは僧形であるが、心は亡者のそれに成り果ててしまっているのであろうか。 武蔵野の新座に古くから伝わる「野寺の鐘」に由来するのではないかという説もある。 武蔵野の野寺の鐘の声聞けば 遠近人ぞ道いそぐらん(在原業平) 音に聞く野寺を問へば あと古りて答ふる鐘もなき夕べかな(紀貫之) あるいは、石燕がその辺りに材を採った創作妖怪なのかどうかは不明。 山の廃寺に恐ろし気な無宿者や浮浪者が住みついたり、檀家のいない破れ寺の破戒僧を旅の人が見たら、野寺坊の姿に映るかもしれない。 |
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