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黒々とした老人が、泥田に埋まりながら「田ぁ返せぇ、田ぁ返せぇ、」と叫び、泥を投げつける。
恨みの絶叫が夜の泥田に響き渡る。哀しい妖怪。 目はひとつ、指は三本。 昔、北国に老人がいた。子孫のために美田を残そうと、寒暑風雨にも耐え、身を粉にして立派な田を作り、やがて亡くなった。 しかし、その息子は酒浸りの怠け者となり、財産を食いつぶしてしまった。老人の丹精込めた田も酒代として他人の手に渡った。 買い取った者は、良い田を得たものだと喜んでいたが、夜になると、目ひとつの黒い魔物が現れるようになった。 自分の田んぼを手に入れた者と腑甲斐無い息子への恨み、「田、返せぇ、田、返せぇ、」と、ののしる。 これを、泥田坊という。 「今昔百鬼拾遺」(鳥山石燕)より |
このサイトの著作者は、たま、/児玉智則です。
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