芭蕉精
(ばしょうのせい)

芭蕉精(ばしょうのせい)

「もろこしにて芭蕉の精人と化して物語せしことあり。今の謡物はこれによりて作れるとぞ」
(中国には芭蕉の精が人間に化ける物語がある。今時の謡曲はこれを元にして作ったものである。)
鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』

今の謡物とは、中国の『湖海新聞』を素材として作られた、お能の演目『芭蕉』のこと。
昔、唐土において、読経する僧侶の前に女が現れた。女は芭蕉の精であった。
芭蕉の精「女や心を持たない草木の類いまでも成仏出来るのでありましょうか」
僧「ただそのままの姿や香りの草木でも、そのまま成仏の国土だ。既に救われているのだ」
草木の命は価値の無いものではなかった...女は喜び、自分が庭の芭蕉の化身であることを告げ、切れ切れに消えていく...

沖縄地方では、繊維をとるために芭蕉が栽培され、広く植えられている所がある。夜遅く芭蕉の並びを通ると怪異に遭う。もし刀を手にしていれば、避けられる。

信州において、読書する僧侶の前に美女が現れ誘惑した。僧が怒り短刀で斬りつけると、女は傷を負い逃げ去った。翌朝に僧が血のあとをたどっていくと、庭に植えた芭蕉が切れて倒れていた。
『中陵漫録・芭蕉の怪』

芭蕉はバナナの類。葉も丈も大きいけれど、その葉はとても破れやすい。若葉がようやく開ききったかと思うと、葉は切れ切れに裂けてしまう。命のはかなさを感じさせる。
幹のような太い部分も、葉の茎が重なっただけで、木材に使えるわけでもない...
生きる意義の空しさ、哀しさが漂う存在として見立てられたようだ。

このサイトの著作者は、たま、/児玉智則です。
画像、文章を無断で複製・転載する事を禁じます。

Don't use my picture and materials without permission

Не использует мою картину и
материалы без разрешения!



芭蕉精(ばしょうのせい)

トップへ. 五十音順索引へ.


inserted by FC2 system