風立ちぬ/九試単戦1号機(Ka-14)

映画『風立ちぬ』にも登場した堀越二郎技師の試作戦闘機


日本海軍の指示に応じ設計された試作機。
前作の重く野暮ったい七試単戦の失敗から2年で、世界の最新鋭機に比肩するような機体が生まれた。

九試単戦(九試単座戦闘機)は、映画『風立ちぬ』においては、主人公堀越二郎が「夢の飛行機」から作り上げた試作機です。

この機体は、海軍が要求した数値を20ノット(約37km/h)上回る243ノット(約450km/h)を出しました。
戦中に開発された機体の多くは、要求値や計算値を割り込んでいます。
九試単戦の初飛行した1935年の前年に飛んだ正式単座戦闘機の九五式艦上戦闘機は、古臭い複葉で、最高速度は352km/h。
たった1年後の機体が100km/hも速くなるとは、驚くべき躍進です。
近代的な九試単戦のフォルムとその高性能を目の当たりにした海軍の関係者は、
「まるで外国にいるようだ」と感想を述べたそうです。



九試単戦一号機(カ-14)は、シンプルで美しいフォルムですが、バルーニング(着陸時に浮いてなかなか着地しない現象)や大迎角時のピッチング(機首が上げ下げする現象。失速にもつながる)などの悪いクセがあり、改修が繰り替えされて、その姿は変貌していきました。
特徴的な逆ガル翼は一号機限りで、2号機からは逆ガルではない主翼に変更され、胴体も無線機などを収納するために太くなりました。

九試単戦を元に改修され正式採用された九六式艦上戦闘機になっても、度重なる改修やエンジンの変更を繰り返します。
それでも九試単戦一号機のたたき出した450km/hという高速を再現することは出来ませんでした。
優美だけれど危うい雰囲気の漂う九試単戦一号機は、現実を加味する前の理想の翼だったのでしょうか。


描き始めたと思ったら仕事が重なり、長らく描きかけのままお蔵入り。
でも、これは描きたいと思いました。

世の中やネットを見ていても、しっかり描き込んだ九試単戦の絵や超精密な模型の画像などは皆無に近く、寂しい気がしました。
(模型や3DCGなどの良作はありますが、もうちょっと細密に突っ込んで描写したのが見たい) せめて、自分なりに頑張って描いた九試単戦の絵を世の中に送り出したいなぁと…

資料はだいぶ集めましたが、不明な点はまだまだ多いです。
胴体側面の前の方の波打っているパネルラインやその周辺とか、照準機の取付架、機銃周りの膨らみ...世に出回っている図面ごとに異なります。
それから後部胴体の縦通材の構成は? これまた世に出回っている図面ごとに縦通材のラインが異なります。
正しい骨組みの図面が欲しいところです。

現存する何枚かの実機写真は、凸凹やパネルラインがほとんど見えなくて、ツルツルテカテカ。
パネルラインや細部を追求出来ず、これは当時の日本の写真の質が悪くコントラストがとんでしまっているのだろうと長年思っていました。

航空史研究家の古峰文三さん(http://stanza-citta.com/bun/)に、
「一号機と二号機は表面を平滑にするために「砥の粉」(三菱社内資料による)を塗りこんで、その上からおそらく灰緑色の塗料を塗って磨き出しています。
こんな仕上げをすると、マスタングの主翼前半のようにリベットもパネルラインもあんまり目立たなくなりますね」と解説して頂きました。

コントラストがとんだように写ってしまいやすい機体表面だったのでしょう。
そこで、パネルラインの自己主張は控えさせ、 ツルテカの胴体に、翼と日の丸の映り込みがあるように表現してみました。
なるほどという知識が入ると、絵を描くのも面白いものですねぇ。



2013.12.6


このサイトの著作者は、たま、/児玉智則です。
画像、文章を無断で複製・転載する事を禁じます。

Don't use my picture and materials without permission

Не использует мою картину и
материалы без разрешения!



風立ちぬ/九試単戦1号機(Ka-14)

化け物屋敷トップへ. イラスト館たま、へ. 飛行機イラスト案内板へ. back. next.

inserted by FC2 system